「りかちゃんマウイ トラベル」経営者の金安理香さんは、ハワイ・マウイ島在住30年。マウイ島を訪れる日本人のお客様のドライバーガイドをしておられます。
マウイ島のことを調べている時、ぐうぜん理香さんのことを知りました。
どの媒体でも、彼女の明るさ、パワフルさが感じられて、どんな方なのかお話しを聞いてみたくなりました。
コロナ禍での生き方、子どもが巣立ってからの生き方……、人生いろいろと悩んだり迷ったりしますよね?
理香さんのお話が、何らかのヒント、または、考えるきっかけになったらいいなと思います。
コロナ禍での過ごし方
コロナが蔓延し、マウイ島では2020年3月から入島制限が設けられました。
2020年11月から、米国内からマウイ島に入ることができるようになりましたが、外国からは未だに入島できません。(2021年5月時点)
「りかちゃんマウイ」経営者で、日本人のお客様にガイドをしていた理香さんは、急に仕事がゼロになりました。
それに、自営業者は政府からの給付金をもらえるのが最後で、会社勤めの人よりも金額も少ないのです。
それは大変ですねぇ。
でも、このままでもいい。お金の問題さえなければ、こんな人生絶対ありないでしょ。
仕事は何もないの。働かなくても誰にも文句を言われない。24時間どうぞお好きにお使いください。神様からわたし、何かご褒美をもらったんじゃないかって勘違いしそう。
すごい! 前向きですね。
この1年は、まずフラの稽古に力を入れて。昨年は、ハラという葉っぱを、自分で畑や道からとってきて、洗って干して濾して、パイナップルの置物を作りました。ユーチューブを見て、自己流でアクセサリーとか何でも作って、すでにプロ並みです(笑)
とりあえず、作ることが大好きなの。特に、ゴミ置き場を毎朝、犬の散歩で回って、捨てられてる椅子や家具などをひろってきて、修理、リサイクル・リフォームするのが得意です。料理、ペイント、手芸と、創作全般なんでもします。
フッと思ったらすぐやりたい! その時間を24時間与えられているから、寝る暇がないの。止まらないの。仕事のことを考えず、夢中になれます。
コロナ前はどうされていたんですか?
仕事をしながら、空いた時間に作っていました。
コロナで、病気を患われた方には申し訳ないけれど、どうにもならない環境・条例を受け入れて、何ができるのかを考えました。
最初は「わたしの人生の休息」と思っていましたが、「やりたいことを片っ端から全てやろう!」と思って。こんな素晴らしい時間はないです。
創作活動
オリジナルを作りたい
今一番力を入れておられるアートは何ですか?
今は、売れてるから絵を描いています。描いていて楽しいけど、まだ自分の絵になりきってないです。
きれいな絵は絵描きさんなら誰でも描けます。わたしはタッチや雰囲気などで「これは理香の絵だよね」と言われるオリジナルの絵を描きたい。そのために、これとこれを合わせたらどうなるだろうって七転八倒しています。
オリジナルの技法を見つけるまで無我夢中。「あっ、こういうやり方があったのね」という発見・発明がサイコーに狂おしくて、のめり込めます。
自称アーティスト
画材やお道具を買ってしまうので、それぐらいの経費は出したいと思って、絵を安く売ったら、案外売れてます。でも、これじゃあ、全然食べられません。
マウイにアーティストの人、多そうですよね。
マウイで一番多い自称の商売は「写真家」「サーファー」「アーティスト」、この3つです。みんな自称。
まあ、言うことはできますからね。
本物のアーティストは、絵を売り、生計が成り立っている人のことです。自称アーティストは、まだ食っていかれない人。だから、わたしは自称アーティスト(笑)
そうか……。わたしの感覚では、作品が売れる状態になったら、自称じゃないのかなと思いました。
まあ、その線もあるけど、やっぱり食っていけて一人前です。
子どもが巣立って10年
残りの人生、精一杯、自分のわがままに生きたい
テキサス州にお住まいの理香さんの娘さんは結婚されたばかりです。(おめでとうございます!)
大学入学を機に、本土に引っ越しされたので、10年離れて暮らしています。
結婚式の時、娘の仲間に「テキサスに引っ越しなよ、もうすぐ孫も生まれるんだから」と言われました。
お孫さんが生まれたらどうしようと思っておられますか?
孫が生まれたら、会いには行くけど、そのぐらいよね。この距離があるから。
そのために引っ越そうとまでは思われないですか?
もしわたしが引っ越しちゃったら、完全にベビーシッターでしょ。そこまでは嫌。孫が可愛くても。
笑
だって、わたしの残りの命、母を卒業して、やっと自分のためにあるから、精いっぱい、自分のわがままに生きたい。
何を一番わがままにしたいですか?
何でもやりたいと思うことをすぐやること。おやつでも、「あ、ドーナツ食べたいな」って思ったら、今すぐドーナツ作るの。その余裕があるというのが幸せ。
自分勝手に離婚して、自分の選択でこういう人生になって、後悔はしていないけれど、シングルマザーで娘を育てるのはとっても大変だった。とにかく働きづめで。
旅行会社をする前は、お勤めして、朝昼晩働いて、娘を預けっぱなし。それを経て今があるから、「もう私のために人生使ってもいいでしょ」と自分でも思います。
この孤独をエンジョイしている
去年からコロナで1年働いていなくて、生活がだらけるかなと思ったら、とんでもない。毎日があっという間。
充実してるんですね。
「一人暮らしだと孤独じゃない?」「寂しくない?」と思われるかもしれないけど、私はこの孤独をものすごくエンジョイしてる。誰にも気兼ねなく、思い通りにできるから。
もうパートナーを見つけて一緒に住むとか、ご飯を作り、面倒見て、何かと譲らなきゃいけないのは、ことさら面倒。
その反面、寂しくなったり、人肌恋しい時はあるけど、天秤にかけたら、やっぱり一人暮らしは譲れません。
今なんて、娘のお弁当も作らない、自分のお腹が空いた時に食べ、自分が寝たい時に寝る。
お日様が空にある間は精いっぱい好きなことをして、自分のためだけのわがまま暮らし、幸せです。
半自給自足が、究極の夢
畑やガーデンをいじるのが大好きなので、本来は、土地を買って、半自給自足しながら暮らしていきたい。あとは、好きな絵を描いて、手芸をして、最期生きたいです。
だから、コロナ禍の今、人生の最期をやらせてもらってるの。
実験みたいな感じですか?
そう、もう最高!! 私はやっぱり最期はこうして生きたいんだと思いました。
3年ぐらい前に、ちょっとへき地の土地に目を付けたの。値段もこの家を売り払えばどうにか買えるぐらい。
テント暮らしから始めてもいいから、土地だけ買っちゃえばどうにかなると思ったの。どうにかさせる自分がいるから。
でも、ハワイの昔からの人はすごく保守的で、その土地で何かするわけじゃないけど、売ってくれなくて。
「代々持っている土地だから、このまま次の世代に渡すだけ」と言われました。
元タロイモの段々畑で、雰囲気は残っているけど、木が生い茂って、ぐちゃぐちゃでした。
それでも、住みたいと思われたんですか?
そう。その土地には川が流れていたから。
電気はソーラーパネルで自家発電できるし、食は土地さえあれば自分で耕せるでしょ。でも、水だけは雨乞いしかできなくて、作れないから重要なの。
川が流れている土地を買いたい。最期一人で死ぬ覚悟を持って、半自給自足できる暮らしを選択したいです。
マウイ島の神聖な場所「ククイプカヘイアウ」
ククイプカとは、ハワイ語で「空高く明るい場所」、ヘイアウとは「神聖な場所」という意味で、古来のハワイアンが祈りを捧げた溶岩を積み上げた神殿。
ここは、マウイの人々にとって、そして、理香さんにとって、大切な場所です。
(ここからは、合いの手なしで、お読みください。)
「ククイプカヘイアウ」とフラの関係
ククイプカは、ハワイの原点。古来のハワイアンが、あの地で最初は「農作物が育つよう雨を降らしてください」「晴れされてください」と祈りを捧げていたの。
彼らには神様はいなくて、天だけで、宗教は、白人が入ってきてから、キリスト教が入ってきました。雨を降らしてくれるのは空。神という名前もなくて、空だけでした。
ククイプカには「ヘイアウ」というお祈りする場所があって、ハワイの部族がそれぞれ持っていて、天気のことを祈っているうちに、病気など色々なことを祈るようになりました。
フラの原点もそこにあって、元々は「カヒコ」という男性だけが、空に向かって踊りで祈りました。女性が踊っているフラというのは、あくまでもエンターテイメントです。
リリウオカラニ女王(最期の王朝の王女さま)が囚われの身の時に、いっぱい詩を書き、その詩がフラソングになっています。だから、愛おしいとか、愛してるとか愛にあふれたお話が歌に多い。それは、囚われの身という悲しみからの夢と願いだと思えます。
人の表現を花やレイに例え、たくましさを海や風に例えて、「これほど愛おしいレイは、きっとあなたの香りがするわ」というように、例えの歌がすごく多いんです。
カフナからの信頼
「ヘイアウ」では、月に一回、ボランティアも含めてやる公開クリーニングがありますが、私は鍵があるので、いつでもそこに心を預け、癒すことができます。
マウイで、カフナ(ハワイ語で、神主様)から信用されて、鍵を授けられている人は数人で、私はその一人です。
ククイプカヘイアウのカフナは、レイオフさんというんですけど、彼女は霊視ができる方で、彼女の前にいると、どんな人かばれます(笑)
わたしは観光業をしているので、お客様を聖地へご案内しています。そのお礼に、清掃係のボランティアに参加し始め、カフナ・レイオフさんと話すようになりました。
鍵を授かるきっかけになったのは、「ククイプカを案内した観光社がたくさんいる中で、直にお布施を届けて来るのは理香ただ一人。どうもありがとう」というカフナからの気持ちです。
マウイ島への恩返し
ヘイアウを好きなのは、そこには神様はいなくて、人の心の中にあれば、それでいいと……。カフナは「ここは天に通じる道で、もしあなたの宗教があれば、その神様に空で祈りが届きます」と言ってくれます。
わたしは、フラよりも先にお祈りの方に興味を持って、ヘイアウでオリ(祈り)をあげられるように勉強をし始めました。
今までマウイ島に住み、娘を一人前に育てられたのは、わたし一人の力ではなく、いろいろな人の助けと愛を注いでいただけたからです。そしてこのマウイ島に感謝の気持ちを持って、今後は恩返し・貢献していきたいです。
この手が必要ならば、ククイプカに限らず、お寺・教会・海・山・ご近所さんと何処にでもお手伝いに行きます。
「りかちゃんマウイ」は、カフナからククイプカへの観光案内許可をいただいています。
お連れするお客様へは、聖地の歴史や文化の説明をし、オリ(祈り)を捧げるお供えのレイを一緒に作り、セレモニーをして差し上げています。
身体を癒やし、己を活かすための有意義な体験ができます。
日本のフラガール達のあこがれの聖地でもあります。
まとめ
理香さんのお話には、マウイ島への愛があふれていました。
コロナ禍の生活を、現実を踏まえながらも、こんなにポジティブに語る方に初めて会いました。
お話をお聞きして、
コロナ禍で大変だなぁと思う時も、考え方を変えてみよう。
子どもが巣立ってからの人生、もしかして、もっと自由に生きてもいいのかも。
と思うようになりました。
理香さん、ありがとうございました。
理香さんのアートに興味を持たれた方は、理香さんのフェイスブックAloha from Mauiをご覧ください。
マウイ島観光については、「りかちゃんマウイ」ホームページへ。